美人マダムお手製カレーは貴重な話とともに頂く

毎週火曜夕方に開催する定例の会議も終わり。
相変わらず内容のある発言は少なく、淡々と時間だけが過ぎていく。
いや、もういいよ、終われば明日は春分の日でお休みだし(いい加減だなおい)。

しかし、週の真ん中に休みがあると助かるね、気が楽だ。夢の週休三日制。
この日はなんとなく、まっすぐ帰宅する気分になれず。
かといって同僚を誘って一緒にどこかへ、というほどの気持ちもなく。
デートしてえなあ・・・。ひとまず帰途に。

そして、途中、某所で前から気になっていたカレー店が視界に入ってきた。
ガラス張りのお店なので、中にお客さんが誰もいないのがすぐにわかった。
ならばちょうどいいタイミングだからふらりと入ってみよう、と。
(※店主のプライバシーに配慮し、店名は秘密です)。

「いらっしゃいませ~」。

あれ、店長は女性なのか。
オレより一回りくらい上、還暦前後かな。場所柄上品なマダムと言った感じ。
ただ、メガネの先にある眼光の強さとか、全体的な佇まいをみて、
お金持ちの奥様が道楽でやっている、というスタンスではないことはすぐにわかった。
自分で人生をきちんと切り開いてきた系の顔立ち。肝が据わっている風。

メニューを開く。
チーズカレー系がおススメらしいが、カロリーに配慮し、ノーマルカレーをチョイス。
こういう時に単品で頼むのはヤボという、見えっ張りなポリシーがあるので、
トリプルカレー(ビーフ・ポーク・チキン)にオプションのディナーセットを頼む。

店内は客が自分だけということもあり、マダムが話しかけてくる。
こちらは出しゃばらない程度に、お店は以前から興味があったが病気のせいで来れなかったこと、
冬は寒さで歩かず、ここをバスで通り抜けることが多く、ようやく伺えたこと、
春も近づき、落ち着いてきたので、立ち寄ることにしたことなどをシンプルに伝えた。

「病気って?」というところからこちらの経緯を少し話したところ、
話題の共通項になったのか、マダムは一気に切り出し始めた。

「実は私も・・・」と。
今はリウマチと闘っていらしゃるそうで、その痛む指を見せてくださった。
確かに途中の関節から変形している。これは大変だ。
リウマチ、膠原病などは、中高年がかかりやすい病気だよね。しかも不可逆だし。

「細胞が壊れていくから、寛解程度のことはあったとしても完治はないんです」。
手の甲を軽く撫でながら話す。そうなのか。詳しくはなかった。
のちに調べると、リウマチって自己免疫による細胞への攻撃なのな。これは怖い。
年齢を重ねた親を持つ自分としても、他人事ではないしね。

痛みも時折かなりのものらしく、内服薬の痛み止めと、
注射(これが高額だそう)でしのぐとのこと。経済的もバカにならないらしい。
「今度はどこが壊れるのかな、ってそれは思ったりします」。

だよな・・・。

マダム「でも、人工透析も大変だったでしょう?」。
だま「はい。でも、世間がイメージするほど(血液)透析は苦しくはなかったです」。事実そう。
(腹膜透析の話はややこしいから触れませんでしたけど)。

マダム「私も主人が糖尿でして。それもそれで心配で」。
だま「あの病気はどちらかというと遺伝的要素が強いように思えます」。
マダム「やっぱりー。主人の家系がそうなんですよねえ(しみじみ)」。

でも、どこかさっぱりとしていてくよくよしていないように見えて。
先に書いた肝が据わった、という、ただものではない感があるのよ。
正直にそう伝えると、マダムは、

「あはは、そう見えますか。いえいえ、大したことはないです」。
「でもーーー」。

「以前、交通事故で瀕死の状態になったことがあるんです。
 スクーターに乗ってて車に巻き込まれて。
 足が向いてはいけない方に曲がって。長期入院とリハビリ生活の日々でした」。

「娘のスクーターを借りたものですから、もう怒られちゃって~」。

「でも、思ったんです。”あの時死んでいてもおかしくない自分。
 なら、あとはおまけの人生。本来であればなかったんだから”って。
 そう考えれば、病気とも向き合えるかなって」。

そうか・・・。
一方でちょっとした風邪やら動悸やら血圧の変化でおびえる自分ーーー。
(もちろん、腎機能の維持上、気をつけることは大事なのだが)。
俺はノミの心臓だわ。

だんだんと漂う香辛料の匂いが食欲を呼び覚ます。

「はい、お待たせしました。ご飯はこのくらいでいいですか?」。

少なめに、と伝えておいたのよ。で、カレーも届きました。見た目だけでおいしそう。
お肉のトリプルがうまー。しかもやわらかくコクがあります。
レベル1~10までの間で選べる辛さ設定は控えめ「2」をお願いしました。
なんか若いころは辛さを求めたけど、おっさんになったらこれだわ。
そして、栄養士に言われたとおり、よく噛んで。もぐもぐならぬカミカミタイム?
「おまけです」とふかしたじゃがいもも。あらま。
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カレーを頂きながら、話の続き。
幸いにも?お客さんははずっと自分ひとり。

マダム「ほんっとに、生きてるといろいろありますよね。でも、自分でやれることは
限られているから、親も施設に行く行かないとかありましたし、
もしかしたらこれまでのできごとは本にできるかも(ふふっ)。もう開き直ってます」。

彫の深さもあいまって、目尻には相応のシワ(失礼)はあるが、
一目見て美人とわかる雰囲気は年齢を重ねてもしっかり保たれている。

だま「お若いころと言っては不躾ですが、さぞかしおモテに・・・」。

マダム「上二人男の兄妹だったからか、かわいげがなくてそちらはサッ~パリ」と笑う。

だま「とんでもない」。

やっぱりみんないろいろある。
自分は恵まれていますわ。腎臓を頂けて、
一応日々痛みもなく過ごせ、よく眠れている。

到底、こんなマダムのように強くはなれないな。
でも、少しでも学ばせてもらって、
自分もいずれ出てくるだろう様々な出来事を、しのげていけたらなと思う。
こういう風に病を受け止める姿勢は参考になります。

しかし、打てば響くような聡明な人との会話はやはり楽しい。
テンポって大事だよな。あと、返しの言葉もセンスがよくて。
やりとりにストレスを全く感じない人はいいね。
こんな人がパートナーだったら素敵だろうなあ。

ああ、なんか気持ちよく春分の日を迎えられるね。
カレーもすべておいしく頂き、食後の紅茶も味わい、深くお礼して辞する。
今夜はドアを開けてもまだ暖かい。ようやく春かな。たまに来ましょう、ここには。

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by navona1971 | 2018-03-20 23:59 | 呑む・食べる・話す | Comments(0)